カテゴリー「弁護士業務」の119件の記事

医療過誤訴訟で2件の和解

長くてがけていた医療過誤訴訟2件で和解が成立しました。

 

1件は昨年末に高裁で和解が成立したものです。

病院に救急搬送された方が、その時点で大動脈解離(大動脈内の内膜が部分的に破れて血液が内膜と外膜の中に流れ込み、外膜だけで血流を抑えている状態)を発症していたのを病院がCT検査で見落としたため、入院から約1週間後に血管の破裂により死亡したという事案でした。

一審では見落としが過失でないとされて請求棄却になったのですが、高裁ではこちらの主張を大幅に取り入れてくれ、請求額の7割くらいを支払ってもらうということで和解になりました。一審が敗訴であることからすれば、勝訴的和解と言えると思います。

 

もう1件は今年の2月に和解が成立した案件です。

 

慢性硬膜下血腫と診断されて夜に病院に入院し、翌朝に手術を予定していたところ、夜の間に病状が悪化し、翌朝手術を受けたものの、脳梗塞が発症して眼の神経などに後遺障害が残ったという案件でした。

こちらはどの時点で緊急手術の適応状態に至ったのかが事実認定における大きな争点でしたが、こちら側の見解と裁判所の見解がかみ合わず、必ずしも納得できる和解案ではありませんでした。しかし、ご本人やご家族とも相談し、結論としては和解しました。

控訴すればもしかするとまた判断が変わったかも知れないとは思うものの、ご本人やご家族の精神的・経済的負担も考慮すると、やむを得ない選択だったのかとも思います。

このあたりの判断は常に悩むところです。

美容整形医院の医療過誤事件

少し前に和解が成立した件です。

交渉開始からADR、裁判と進み、解決まで2年近くかかってしまいましたが、無事、和解が成立しました。
美容整形でいわゆる痩身美容の一種とされる最先端の治療を受けたところ、患部が炎症を起こして1年くらい痛みが引かなかったという事案です。
いろいろ問題のある治療だったことは間違いないのですが、病院側はなかなか責任を認めようとしませんでした。裁判所からの強い説得を受けてようやく和解になりました。依頼者ご本人も納得してくれて私もホッとしました。
今年はこのほかにも医学的な問題が争点になった事案が例年より多かったように思います。印象に残っているものとしては先日の記事にも書いた交通事故の高次脳機能障害の後遺障害のケースなどもありました。
結構大変な思いもしましたが、いろいろな事件があって充実した1年だったような気がします(まだ今年は終わってませんが)。

高次脳機能障害

少し前になりますが、交通事故で高次脳機能障害の後遺症を負った被害者の方の損害賠償請求訴訟が終結しました。

後遺症2級の認定を受け、ご高齢の方でしたが、年金も含めれば、この先の生活はなんとか大丈夫というくらいの賠償額を認めてもらえました。
高次脳機能障害は比較的新しい後遺症で、まだ一般の方にも医療関係の方にも十分に知られていない領域のように思われます。
そのため、事故前と比べてなにかおかしいな・・・と思っていても、後遺症とは気付かないまま過ごしている方もいらっしゃるのではないかとも言われています。
今回も、主治医の先生や入所施設、ご親族の方々などから病状等に関する資料をいろいろと出してもらい、それでようやく認めてもらえたという感じでしたが、控訴されず一審で確定したのは幸いでした。
まだまだ簡単にはいかない分野であることは事実ですね(まあ、なんでもそうですけどね)。

ある労働審判

労働審判については何回か記事にしていると思いますが、先日、1件まとまった件がありました。
調理関係の仕事をしていた方でしたが、過労で倒れ、2年以上休業した後で後遺症3級の認定を受けたという事例です。労災認定を受けられたので休業期間中も休業保障給付を受けられたのですが、後遺症認定を受けてそれが終了したので、元の勤務先に対して後遺症の慰謝料と逸失利益を請求する労働審判を申し立てたものでした。
事前の交渉では相手方はかなり渋っていたのですが、労働審判ではあらかじめ提出していた資料に基づいて裁判所がある程度の案を出してくれたこともあり、こちらの思っていた線で1回目の期日で即成立となりました。金額的にも依頼者の方の老後の生活に心配のない位の金額で、とても喜んでいただいて、本当に何よりでした。
やはり、うまくいくときは本当にうまくいく制度ですよな。

それでは、また近いうち更新します。

相続人166人の遺産分割事件(続報)

少し前の記事で、相続人166人の遺産分割事件のことをアップしました。

それで終わりかと思いきや、実は、被相続人名義の不動産(山林などの持分)がまだ残っていたことが判明し、更に同じ方々を相手として、また同じ遺産分割を申し立てなければならなくなったのでした。
共有持分で固定資産税の請求なども来なかったために、相続人の方もお気づきでなかったようです。
遠いご先祖様の不動産の件で(しかも今回は山林の共有持分)、再度当事者にされてしまった相続人の方々には平謝りに謝罪し、裁判所にも白い目で見られながらも、どうにかこうにか2度目も審判で相続を認めてもらうことができました。
1度目と2度目の間は1年ちょっとくらいですが、166人もいらっしゃると、その間にも住所が変更になった方や亡くなられた方、海外に移住された方などいろいろと変動が生じ、1度目と変わらないくらいの手間と時間がかかってしまいました。
いずれにしろ、何とか完了して一安心です。
3度目はないことを説に願っています。

震災関連死の裁判

一昨年から手がけていた震災関連死関係の裁判がようやく終了しました。

高齢のご夫婦が震災により自宅全壊の損害を受け、3日間ほど自動車で暮らした後、1ヶ月半ほど全壊の家で生活した後に奥様が施設に入所したところ、すぐ肺炎になり、一旦治ったとされたもののまた再発して、ずっと病院に入院したまま8月に亡くなったという方でした。
残されたご主人は、妻は震災によって衰弱して死亡したとして仙台市に弔慰金の申請をしたものの、仙台市は震災と死亡との間に因果関係が認められないとして、震災関連死と認定しなかったことから、ご主人が仙台市を相手に震災関連死であることを認定して弔慰金の支給に応じるようにと裁判を起こしたものです。
マスコミにも報道していただきましたが、東日本大震災についての震災関連死裁判では、全国で初めて原告側の主張が認められて勝訴した裁判でしたが、その後に仙台市から控訴され、控訴審でも勝訴して、仙台市が判決に従うことを決定したことから、ようやく確定になりました。
震災関連死ではその後に2~3件くらい原告勝訴の判決が出ているようです。
震災による直接死はまだ分かりやすいのですが、関連死となると明確な基準もなく、因果関係を問題視される事案は少なくありません。
今回のケースでは、裁判の中で、妻が震災後に通われていた病院のカルテなどから、嚥下障害という咽の機能が低下して物をうまく飲み込めなくなる症状が震災後に現れ始めていることが明らかになってきたため、それが肺炎の原因にもなったと認められて、全体として震災と死亡との因果関係が認められました。
病院の記録上、はっきりそのことが現れていたのは幸運だったと思います。
それだけでなく、判決では震災後の劣悪な生活状況を詳細に認定していただき、そのような劣悪な生活状況が妻の心身に影響を及ぼし、肉体的・精神的な疲労につながったことを丁寧に記載していただきました(もちろん、私たちが主張したことではあるのですが)。
因果関係の問題となると、どうしても医学的なことなど理論的なことを中心に考えてしまいがちですが、ご本人の置かれた生活環境などを丁寧に裁判所に理解してもらうことが大事だということを改めて実感した事件でした。

お盆休み

事務所は現在お盆休みですが、事務所に出て仕事してます。

今年は少し夏休みをずらして取る予定です。
お盆期間中は裁判所も一般の会社もお休みなので、電話も来ないし、法律相談のお客さまも余りお出でにならないので、ゆっくり仕事してます。
4月から少しバタバタしていたので、こんな感じでのんびり調べ物をしたり、書面にじっくり取り組んだりできる時間ていうのも、たまにはいいな~と思ってるところです。
皆様は、どうぞ良いお盆休みを。

交通事故物損事件と弁護士費用特約

昨年暮れから今年にかけて、被告的少額の交通事故物損事件が3~4件まとめて解決しました。ほとんど弁護士費用特約付の保険に加入されていた方でした。

私の扱い事件では物損事件はそんなに多い方ではないのですが、弁護士費用特約が普及してきたことで物損事件を弁護士事務所に依頼される方が増えてきているような気がします。
物損事件はもともと数十万円程度の被害のことが多く、たとえば過失相殺でそれの1割2割を争ったとしても全体として大きな違いになりにくいことから、弁護士費用をかけてまでは・・・と二の足を踏んでいた方が多かったのではないかと思います。
でも、弁護士費用特約に入っていれば自己負担は実質なしで裁判まででもやれますので、きちんと納得のいく解決をしたいという方にとってはとても役に立つ制度だと思います。
弁護士としても、少額の物損事故でもきちんとやれるだけのことはやりましょうとお勧めしやすいので(そうでないとこちらも遠慮してしまいます)、弁護士費用特約はこちらにとってもありがたいですね。
対人や対物の損害賠償は自分が事故を起こさないように運転していればある程度回避もできるかも知れませんが、もらい事故はいつなんどき誰の身に降りかかるかも知れないものです。多くのドライバーの方に加入してもらいたいものだと思います(保険会社の回し者ではありません。念のため)。

今年多かった事件

今年を振り返るのはまだちょっと早い気もしますが、今年扱った事件で多かったジャンルは何かと考えてみました。

一番は離婚や不貞関係などの男女問題でしょうか。特に不貞の慰謝料関係は請求する側も請求される側も年々多くなっているような気がします。
二番目は相続関係でしょうか。特に去年から今年にかけて結構大変な案件がいくつか片付いたので、何となくホッとした感じがしてます。
あと、三番目は交通事故でしょうか。比較的大きな事故の件もありましたが、それほど大きくない物損事件にも今年はけっこうご縁がありました。
例年多い債務整理関係は今年はそんなにありませんでしたが、それでもコンスタントにはありました。会社の倒産・清算関係も、申立側・破産管財人・民事再生監督委員とバランス良く(?)あった1年でした。
そう言えば、忘れてはいけない私的整理ガイドラインによる私的整理の案件も結局10件くらいやったんでしょうか。皆さん生活再建が順調に進んでいるといいんですが・・。
あとは長期間取り組んできた国家賠償請求訴訟が終わったのも肩の荷が降りた気がしています。
こうしてみると、今年もいろいろな事件に恵まれていろいろな方にお会いできた年でした。
それにしても、1年経つのって早いですね。来年はどんな事件に巡り会えるんでしょうか。楽しみです(それこそまだ早いか)。

相続人166人の遺産分割審判

相続人166人の遺産分割審判が、本日、ようやく確定しました。

依頼者の方は震災で自宅が倒壊したものの、土地建物ともに先々々代のご先祖様の名義だったため、ローンが組めず建て替えができないという方でした。
相続人調査は司法書士さんがやってくれており、私はそこから引き継ぎましたが、生死不明の方や外国に居住して戸籍や住民票をたどれない方がいたり、申立準備中に更に相続が発生して相続人が増えたりなど、なかなか大変でした。
相続人の方全員に手紙を何度も差し上げ、事情を説明してご理解を得るようにし、「相続分放棄及び脱退届」に署名押印してもらうようにお願いをしました。
これを裁判所に出していただけると、自分は相続分を主張する意思がないということで、手続から脱退することになります。
何度もお願いをし、最終的には約160人の方が脱退届を出して下さいました。
残りの方については、部分的に訴訟を提起してこちらの所有であることを確認することにしましたが、これについては結果的に応訴する人はなく、欠席判決になりました。
その上で、最終的に相続財産を全部こちらの依頼者にするという内容の審判を出してもらい、ようやくそれが確定したという次第です。
これほどの人数の遺産分割調停・審判はほかに余り例を見ないのではないかと思います。なにせ、被相続人の方がなくなったのが昭和24年であり、あと2年くらい早ければ家督相続という時代ですから。
いずれにしろ、無事に解決してホッとしました。

より以前の記事一覧

お気に入りサイト

2020年5月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ