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震災関連死の裁判

一昨年から手がけていた震災関連死関係の裁判がようやく終了しました。

高齢のご夫婦が震災により自宅全壊の損害を受け、3日間ほど自動車で暮らした後、1ヶ月半ほど全壊の家で生活した後に奥様が施設に入所したところ、すぐ肺炎になり、一旦治ったとされたもののまた再発して、ずっと病院に入院したまま8月に亡くなったという方でした。
残されたご主人は、妻は震災によって衰弱して死亡したとして仙台市に弔慰金の申請をしたものの、仙台市は震災と死亡との間に因果関係が認められないとして、震災関連死と認定しなかったことから、ご主人が仙台市を相手に震災関連死であることを認定して弔慰金の支給に応じるようにと裁判を起こしたものです。
マスコミにも報道していただきましたが、東日本大震災についての震災関連死裁判では、全国で初めて原告側の主張が認められて勝訴した裁判でしたが、その後に仙台市から控訴され、控訴審でも勝訴して、仙台市が判決に従うことを決定したことから、ようやく確定になりました。
震災関連死ではその後に2~3件くらい原告勝訴の判決が出ているようです。
震災による直接死はまだ分かりやすいのですが、関連死となると明確な基準もなく、因果関係を問題視される事案は少なくありません。
今回のケースでは、裁判の中で、妻が震災後に通われていた病院のカルテなどから、嚥下障害という咽の機能が低下して物をうまく飲み込めなくなる症状が震災後に現れ始めていることが明らかになってきたため、それが肺炎の原因にもなったと認められて、全体として震災と死亡との因果関係が認められました。
病院の記録上、はっきりそのことが現れていたのは幸運だったと思います。
それだけでなく、判決では震災後の劣悪な生活状況を詳細に認定していただき、そのような劣悪な生活状況が妻の心身に影響を及ぼし、肉体的・精神的な疲労につながったことを丁寧に記載していただきました(もちろん、私たちが主張したことではあるのですが)。
因果関係の問題となると、どうしても医学的なことなど理論的なことを中心に考えてしまいがちですが、ご本人の置かれた生活環境などを丁寧に裁判所に理解してもらうことが大事だということを改めて実感した事件でした。

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