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テロリストのパラソル:藤原伊織

以前の記事(人間失格:太宰治)にコメントを寄せていただいた方が紹介してくださった小説です。

史上初めて、江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞したという日本版ハードボイルド小説だそうです。

いわゆる全共闘世代の主人公が、20年の歳月を経てアル中のバーテンダーに身をやつし、ある日曜日にいつものように近くの公園に行って朝からウィスキーの小瓶をあける・・・という場面から物語りは始まります。

状況説明もそこそこに、突如として公園でおこる大規模爆弾テロ事件。

かろうじて難を逃れた主人公が見たテレビニュースで、その事件の被害者として、20年前の「同志」だった2人の名前が目に飛び込んできます。

全共闘時代の3人の「同志」の、20年に及ぶ数奇な人生の歩みがある日ある時間にある公園で1つに交わったという偶然。

主人公がその謎を追ううちに、思いもかけない真実が明らかに・・・というお話です。

私はいわゆる全共闘世代よりは少し遅れて大学に入学しましたが、私の頃も大学の寮にはまだ学生運動の残照的な雰囲気が残っていました。そのため、恥ずかしながら、全共闘の時代にはちょっとしたシンパシーを感じています。

あの時代に、ある意味1つの信念に燃えて燃え尽くした人たちが、その後の人生をどんな気持ちで送っているのか、興味があるところです。それぞれにあの時代を引きずり、又は忘れるよう努めながら生きて来られたのでしょうか。

この小説で描かれた3人の生き様は、きっと、そんな全共闘前後の世代の方々の共感を得たのだろうと思います。

それにしても、作中に登場人物の作として紹介される短歌

「殺むるときもかくなすらむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ」

は、本当に悲しい歌ですね。作中でのこの歌の作者(誰がいつ詠んだのかはネタばれなので言えませんが)の気持ちを思うと、本当に切なくなります。この作品全体を象徴するような、とても印象的かつ効果的な短歌だと思います。

どこに出てくるのか、是非、作品で確認してみてください。

作者の藤原氏は残念ながら2007年にガンで逝去されておられます。

ご自身の人生も波瀾万丈だったようで、作品中の主人公の生き方に重なるものがあったようです。

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