駆け出しの頃、依頼者の方によく「お若いですね」と言われました。
当時、私は26歳でしたので、まあ、当時の弁護士としては実際にも少しは若い方だったと思います。
当時の私は、この言葉を言われて、無邪気にも得意になっていました。
我々の世界では、「若くて優秀」というのはある意味定型的なホメ言葉でしたので、別に違和感を感じることもありませんでした。
でも、あるとき、フッと気づいたのです。この言葉を口にするとき、依頼者は決して私を誉めているのでも感心しているのでもないことに。
そうではなく、「自分の人生の一大事をこんなちゃらちゃらした若造に任せて大丈夫なんだろうか・・・」という心の奥底にあるほんのちょっとした不安が、無意識に言葉になって表れているのがこのセリフなのです。
もちろん、依頼者の方に悪意があるわけではありません。本当に若くてすごいなと思う気持ちもきっと何%かは併存しているのかも知れません。
でも、それよりも潜在意識の中の不安感が表面に現われているのがホントのところなのです。そのことは、依頼者の表情や、私に対する態度、セリフをよく観察すると、理解できることなのです。
そのことに気付いてから、このようなセリフを言われたときには、不安を払拭するため極力落ち着いた、自信あふれる物腰で依頼者の方に接するよう努めました。
間違っても「いやぁ~、大したことないっすよ~。ヘラヘラ・・」という態度を取ってはいけません。いっぺんに信用を失うことになってしまいます。私も最初の頃はそんなことをずっとしていたかと思うと、今となっては本当に恥ずかしい限りです。
この手のセリフはほかにも結構あると思います。日本人は奥ゆかしいので、本心をなかなか表に出さないんですよね。
でも、弁護士って自分が絶対正しいと思ってる空気読まない人種なので、そういった依頼者の微妙な心の揺れ動きに気づかない人も多いんじゃないかと思います。
40を過ぎて、最近はさすがに「お若いですね」とは言われなくなりました(もし今言われたら、それこそ逆に舞い上がっちゃうかも知れません(笑))。
でも、依頼者の方の表に出さない心情を、なるべく敏感に汲み取れるようにしたいということは、今も心がけています。