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火車:宮部みゆき

自己破産や借金に悩む人の実像を描いた小説として、以前から弁護士内では面白いと評判の作品です。

物語は怪我で休職中の刑事が、親戚の男性から、行方不明になった婚約者を捜して欲しいと依頼されるところから始まります。

刑事が婚約者の行方を探るうちに、借金に追われ泥沼にはまっていく人間の弱さと、取り立ての凄惨さが浮き彫りになっていく・・・というストーリーですが、丁寧な取材に裏付けられていて、非常にリアルな小説だと感じました。

ストーリー展開にスピード感もあり、文庫本で580頁ほどの長編でしたが、あっという間に読み終えました。

この小説が書かれたのは平成4年ということで、ちょうど私が弁護士登録した年です。

その少し前の昭和の時代に、「サラ金地獄」が社会問題になり、昭和58年にはいわゆる「サラ金規制法」も施行されるなど、消費者信用の問題がクローズアップされつつある時代でした。

貸金業者の苛烈な取り立てに対して、弁護士が自己破産という手段で対抗し始めたのもその頃(昭和58年頃)からだと思います。

しかしながら、その当時は自己破産に対する誤解や偏見も根強く、自己破産すると普通の社会生活ができないのではないかと心配して結局誰にも言えずに苦しんでいた方々が大勢いらっしゃったと思います。

私が仙台弁護士会に弁護士登録した平成4年頃は徐々にそのような誤解も解消されつつあり、自己破産手続もその後に次第に簡略化されていったことから、その後は自己破産の件数はうなぎ登りとなっています(最高裁の統計によると、平成4年が約43,000件だったのに対して、平成18年度は約165,000件です)。

弁護士会や司法書士会、民間の団体など、クレジット・サラ金問題に取り組んでいるところも増えていますので、現在ではこの小説の頃よりは借金問題に対する対処の仕方は一般の方にも知られるようになっていると思います。弁護士が入った場合には業者側も取り立てを控えるなどのルールも徹底されてきました(私が弁護士登録した頃は、受任通知を出しても平気で取り立てをしている業者も少なくありませんでした)。

しかし、そうなると今度は「ヤミ金」が跋扈するなど(少し前には、商工ローン業者の「目ん玉売れ」などの取り立ても問題になりました)、どんどん新手が現れてきます。

現在でも、この小説に近いような苦境を強いられている人はまだまだいらっしゃるのかも知れません。

何かが規制されたり、対処法が確立すると、今度は別な手口が現れる、そしてまたそれに対する対策を練る・・・。そんなイタチごっこが繰り返されるのは、残念ながら人の世の常なのでしょうか。

本題からそれましたが、とても面白い小説ですので、是非ご一読を。

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