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人間失格:太宰治

以前の記事、「私の故郷」(仙台弁護士会会報からの転載)でも書いたとおり、私は津軽の出身です。

記事の中ではではもっともらしく太宰治の「津軽」の一節を引用したりしたのですが、実はそれ以外ほとんど読んだことのない「なんちゃって太宰ファン」だったのです。でも、記事を読んでくれた昔の知人に勧められ、ほかの作品も読んでみることにしました。それがこの本です。

プロローグ後の冒頭部分、「恥の多い生涯を送ってきました」という一文に、この小説の全てが凝縮されている感じがします。

実際に世間から「恥」と評されてもやむを得ないような主人公の現実の生活と、自分の全てを「恥」と感じすぎてしまうセンシティブなメンタリティまたはコンプレックスがこの小説の主題になっています。両者は鶏と卵のように、どちらが原因とも結果とも言えず、相互補完し合うように絡み合いながら主人公を滅亡の淵へと追い込んでいきます。

ご存じのとおり、作者はこの作品を完成させた後、遺作「グッドバイ」の草稿を残して女性と一緒に心中します。

作者の実生活を題材にしているだけに身につまされるものがあります。

ここまで強烈なものではないにしても、青年期のある一時期、コンプレックスにさいなまれたり、「破滅的な生き方」に惹かれたりすることは多くの人(特に男の子?)にとって身に覚えがあることだと思います。

それでも、何とか現実との折り合いを付けて生きていこうと前向きに模索する姿が古来から文学で取り上げられてきた1つのテーマであるのに対して、ここまであからさまにコンプレックスを吐露して自分が崩壊する様子を描写した作品は、それほど多くないと思われます。

そのあたりに、作者の苦悩の深さが偲ばれます。

「野ブタ。をプロデュース」のところでも書きましたが、「本当の自分」と「周囲に対して演じている自分像」のかい離に苦しむというのは、きっと、いつの時代にも共通な若者の悩みなのでしょうね。

今の時代にも(むしろ今の時代だからこそ)共感を感じさせられる作品だと思います。

最近は「蟹工船」も若い人の間でブームだそうですが、こんな本も読んでみても良いのでは?でも、ストレートすぎて賛否は分かれるかも知れませんね。

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コメント

太宰治は思いの外とらえどころのない作家ですね。人間失格のような作品もある反面、津軽のようなある種おおらかな面も兼ね備えています。
「満願」という短編があります。無駄のない文章で人生の機微を感じさせてくれます。「白いパラソルをくるくるっとまわした。」というあたりがとても素敵です。超短編で青空文庫にありますので、次に紹介しておきます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1564_14134.html

「テロリストのパラソル」を書いた故藤原伊織も太宰を読んでいたと思います。
「殺むるときもかくなすらむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ。」

コメントどうもありがとうございます。
確かに素敵な作品ですね。
私は本文に書いたとおり「なんちゃって太宰ファン」なので、初めて読みました。
また、何か教えてください。

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